「身世飄零」−つかの間の栄華と没落の予感

 香港映画「金瓶梅」の挿入歌。「身世飄零」は貧家に生まれた潘金蓮が、高楼に上り、豪華な宴席に侍りつつ、琵琶を奏でながら、貧しかった昔を偲んで歌う歌である。華やかな背景と対照的であるが、それはやがて来たるべき彼女の没落をも予感させる歌でもある。この映画ではヒロインの潘金蓮は、単なる「悪女」としてではなく、貧窮のなかに生まれながらも、美貌と歌を武器として、逆境に挑戦する「反逆の女性」として描かれていたらしい。
 もっとも、音楽はもともとそれが唄われた映画のシナリオとは独立の生命を持つ。ちょうど「支那の夜」などと言う映画のことを全く知らない人でも「蘇州夜曲」に惹かれるのと同じようなことが、この「身世飄零」にも言えそうだ。Youtube の映像中に登場する少女はどうみても、伝説的な女性である潘金蓮には似つかわしくない。このイメージ・ビデオの作者は、姚敏の古雅なメロディーと李香蘭の艶やかな声に触発された映像を、全く自由に制作したようにも見える。もっとも、十五のときのヒロインの姿であると考えれば、このようなイノセントな一面が潘金蓮にあったとしても不思議ではないが。


  身世飄零 
作詞:姚敏 作曲:姚敏 歌唱:李香蘭

盈盈十五美紅妝
生長在那貧家呀暗自傷
辛苦為人壓金線
縱來未識綺羅香