竹中平蔵氏の確率談義ー浜岡原発は慌てて停止する必要は無いか?

竹中平蔵氏は、最近のTwitter で次のような発言をしている。この一年間で浜岡原発が事故を起こす確率は、2.9パーセント、一ヶ月で事故を起こす確率は0.2パーセントで、非常に小さいから、菅首相のように慌てて停止する必要ななく、原発停止の様々な社会的コストを試算するために1ヶ月かけても、その間に地震が起こる確率は極めて低いというのである。

30年で大地震の確率は87%・・浜岡停止の最大の理由だ。確率計算のプロセスは不明だが、あえて単純計算すると、この1年で起こる確率は2.9%、この一カ月の確率は0.2%だ。原発停止の様々な社会経済的コストを試算するために1カ月かけても、その間に地震が起こる確率は極めて低いはずだ。

30年間で87パーセントだから、1年間ならその1/30で2.9パーセントというのであるが、この確率計算はおかしいと思った人が多いのではないか。たしかに可笑しいのである。竹中氏の計算方法の間違いは、つぎのように逆方向に考えるならすぐに分かるだろう。つまり、今後1年間に事故の起こる確率が、仮に竹中氏の言うように2.9パーセントとしたら、竹中氏の計算方法に由れば、30年後には87パーセントになるというのだが、その調子で40年後の場合を計算すると、2.9×40=116パーセントで、何と100パーセントを超えてしまうのである! だから、87パーセントを30で割ると言う安直な考え方は、端的に言って間違いなのである。正解が、2.9パーセントより大きいということは、次のように考えれば容易に分かるだろう。

たとえば2つのさいころを投げて共に1の目が出る確率が1/36 約2.9パーセントである。30回試行して(すくなくも一回)二つとも表の出る確率を計算すると、それは87パーセントではなく、1−(0.971^30)=0.586 で約59パーセントである。この計算方式ならば、36回以上試行して、確率が1を越えるという如き馬鹿げた結論にはならない。

ところで、実際よりも小さすぎるとはいえ、一年以内に浜岡原発が大地震にあう確率が2.9パーセントであるということを竹中氏と共に認めたとしてみよう。その場合でも、竹中氏のように安閑としていられるかどうかは疑問である。「危険」とか「安全」という言葉は、日常的な感覚を反映しているので、数値で厳密に表すのは難しいが、この2.9パーセントというのは、「二つのさいころを同時に投げてともに1の目が出る確率」にほぼ等しいのだから、直観的なわかりやすさがある。

たとえば、毎年、二つのさいころを同時に投げて共に1の目が出れば、時限爆弾が爆発するというようにセットされていたとする。30年までにその時限爆弾が爆発する確率は59パーセントという結果になる。40年迄だと69パーセントというように、年数が多くなればその確率は上昇していくだろう。
原発を時限爆弾に喩えたのは廣瀬隆氏であったが、私だったら、こんな「さいころ賭博」のような時限爆弾を自分の家の近くに置いておくことにはとても同意しかねるというものだ。