吉井英勝議員の自由報道協会での記者会見を聴く

すでに 3月24日のブログ記事で、吉井英勝衆議院議委員の予見について言及したが、今日は、自由報道協会での記者会見を聴くことが出来た。

吉井英勝衆議院議員 主催:自由報道協会

原子力発電所が孕む問題点を3/11以前に、この人以上に明確に把握していた国会議員はいなかったのではないか。全電源喪失の可能性を指摘し、対策の有無を問いただした吉井議員の質問とそれに対する無責任な応答が議事録として残されているのだから、送電鉄塔の倒壊と津波による冷却機能喪失を想定すべきであったことは明らかである。「想定外」とは、損害賠償法の免責を意識して使われていたことは間違いないだろう。
吉井氏は外国の記者団からも取材を受けており、いわゆる原子力の利益共同体が形成している「原子力ロビー」の問題点を指摘したらしい。日本の電力会社を中心としていた国策民営事業について、外国の記者から、「それでは全く旧ソビエト連邦だ!」と言う指摘があったらしい。組織的な無責任体制ということか。

吉井氏は、原発反対派であるが、すでにある老朽化した原発が危機的な状況にならぬような具体的な提言もしていた。そしてその内容は、実に3/11の状況を先取りしていたのである。すでにこのブログでも言及したが、あえて再録しておこう。

○吉井委員 例えば志賀1号で、地すべりで高圧送電線の鉄塔が倒壊した、外部電源の負荷がなくなったから原発がとまったというのがありますね。原発がとまっても機器冷却系が働かなきゃいけませんが、外部電源からとれればそれからも行けるんですが、それも大規模地震のときはとれないわけですね。
 では、内部電源の方はどうなっているかというと、こちらの方は、実際には99年の志賀1号だとか、88年の志賀2号とか、99年2月や98年11月の敦賀の事故とか、実際に、バックアップ電源であるディーゼル発電機自身が事故をやって働かなくなった、あるいは、危ないところで見つけはしたけれども、もし大規模地震と遭遇しておれば働かなかったというふうに、配管の切断とか軸がだめになっていたものとかあるわけです。そういう中で、スウェーデンのフォルスマルク原発1号では、バックアップ電源が4系列あるんだけれども、同時に2系列だめになった、こういう事故があったことは御存じのとおりです。
 それで、日本の原発の約6割は、バックアップ電源は3系列、4系列じゃなくて2系列なんですね、6割は。そうすると、大規模地震等によって原発事故が起こったときに、本体が何とかもったとしても機器冷却系に、津波の方は何とかクリアできて、津波の話はことしの春やりましたけれどもクリアできたとしても、送電鉄塔の倒壊、あるいは外部電源が得られない中で内部電源も、海外で見られるように、事故に遭遇した場合、ディーゼル発電機もバッテリーも働かなくなったときに機器冷却系などが働かなくなるという問題が出てきますね。このときに原子炉はどういうことになっていくのか、この点についての原子力安全委員長の予測というものをお聞きしておきたいと思うんです。 それが一点と、もう一点は、機器冷却系が働かないと当然、崩壊熱の除去ができませんから、崩壊熱除去ができないことになったときに、核燃料棒のバーンアウトの問題、これは海外でそういう例もありますけれども、こちらの方はどうなっていくのかという原子炉の安全にかかわる問題について、この場合、どのように想定して、そして審査を進めておられるか、これを伺います。
○鈴木篤之参考人原子力安全委員会委員長) ありがとうございます。
 最初の点でございますが、いろいろな事態がもちろんあり得ると思っていまして、ただ、そういう事態になったとしてもできるだけ、先生が御心配のように、炉心が深刻な事態にならないようにというのが我々がとっている方針でありまして、そういう意味では、例えば非常用ディーゼルが万一動かなくなったという場合には、さらに直流のバッテリーを用意するとか……(吉井委員「いや、フォルスの方はそれもだめでしたからね、2系列」と呼ぶ)フォルスマルクの場合は4系列の2系列がさらにだめになったということですね。(吉井委員「バッテリーもだめでしたから」と呼ぶ)はい、2系列ですね。
 したがって、同じバックアップを多重に持つということと、多様に持つ、つまり、ディーゼルだけじゃなくて直流も持つとか、それからそれぞれを複数持つとか、そういう考え方をまず審査の段階で、設計の段階で確認しております。
 地震等においてさらにそういうものが使えなくなるという事態に対しては、もう一つは、私どもとしては、アクシデントマネジメント、非常事態における管理ということで、日本の場合は同じサイトに複数のプラントがあることが多いので、ほかのプラントと融通するとか、そういうような非常に多角的な対応を今事業者に求めているところでございます。
 それで、先生お尋ねの、そういう事態になったときにバーンアウト等で燃料が破損する、放射能が外部に放出されるというような事態に対してどう考えているかというお話でございますが、これにつきましては、まず、そういう事態になったときに大きな事故に至らないかどうかを設計の段階、最初の基本設計段階で安全評価をして、安全評価の結果、そういう事態に至らないようにまず確認するというのが一番の基本でございます。
 と同時に、しかし、さらに非常に、通常はあり得なくても理論的にはあり得るという事態に対してどう考えるかでございますが、これについては私ども、最近、耐震安全に係る指針を改定いたしました。そういうことで、さらに耐震設計を基本的には厳しくしていきたい、こう考えておりますが、そういう中でも、さらに、残余のリスクと称しておりますけれども、そういうような基準をさらに超えるような大変大きな地震が来たときには、では、どうなのかということも、これは事業者に、そういうことも評価してください、評価した結果、そういうことがまず起こらないことを数字で確認するか何らかの方法で確認してください、そういう方針で今考えております。
 ありがとうございました。
○吉井委員 時間になりましたから終わりますけれども、私が言いましたのは、要するに、フォルスマルク原発の場合も、ディーゼルとそれからバッテリーと両方一系列なんですよ。これは4系列あるうちの2系列がだめになったんです。外部電源もだめですから、ほかのところから引っ張ってくるというのも、もともとだめなんです。ですから、そういう場合にどういうふうに事故は発展していくものかということをやはり想定したことを考えておかないと、それは想定していらっしゃらないということが今のお話ではわかりましたので。あわせて、バーンアウトという問題は非常に深刻です、燃料棒自体が溶けてしまうわけですから。これについては海外でチェルノブイリその他にも例があるわけですから、バーンアウトというのは深刻な問題だということで、原子力安全審査というのはまだ発展途上といいますか、この例を言ったら、事務方の方はそれはまだ想定していませんというお話でしたから、きちんとこういうことを想定したものをやらない限り、原子力の安全というのは大丈夫とは言えないものだ、それが現実だということを指摘して、時間が参りましたので、また次の機会に質問したいと思います。