経済産業省の内部文書と菅直人首相の決断

原子力発電によるエネルギーの「安定供給」を国策としてきた経済産業省の役人どもが次のような内部文書を用意していたことが東京新聞に掲載されていた。http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011050601000829.html 
それによると「原発の緊急安全対策を進めて「安全宣言」を早期に行うことで既設の原発からの電力供給を確保し、2030〜50年には「世界最高レベルの安全性に支えられた原子力」を3本柱の一つとする」というのが日本の今後のエネルギー政策だとのことである。この文書の日付は、何と今年の5月6日である! つまり、これを書いた役人の頭のなかには、福島原発事故がいかに国民の安全と生命を脅かしたかという視点は全く存在しないのである。

これに対して、市民運動から政治活動を始めた菅直人首相が、その初心に立ち返り官僚と対決を辞さぬ決意を示したことは評価されねばならない。本日七時に菅首相浜岡原発のすべての原子炉の運転停止を中部電力に要請した。これは英断と言って良い。しかし、官僚、中部電力、マスメディアを通じてこれまで形成されてきた「原発ロビー」は容易なことでは「国策民営原発」の既定路線を変更しないであろう。防潮堤が完成時には原発再開という約束をさせられて脱原発が骨抜きになる可能性もある。国民の生命と安全を第一とするこの決断を、脱原発への長い道のりの一歩として位置づけなければならない。