イマジン−無心の祈り

自由訳 イマジン

自由訳 イマジン

新井満氏の「イマジン」自由訳、同世代のものとして大いに共感を持って読んだ。ジョンレノンのこの曲の歌詞には、以前から東洋的な「空」の思想に親近感があるものと思っていたが、それは別に私一人が感じるものではなく、新井氏もまたそうであったことを確認した次第である。それだけでなくて、この本の末尾にはオノ・ヨーコ氏との対談が収録されていたが、それを読むと、ジョンレノンが晩年は、老子や仏教思想の根源を為すものに共鳴していたことが分かった。


Imagine there's no heaven It's easy if you can No hell below us Above us only sky Imagine all the people Living for today.....
Imagine there's no countries It isn't hard to do Nothing to kill or die for And no religion too Imagine all the people Living life in peace....
You may say I'm a dreamer But I'm not the only one I hope someday you'll join us And the world will be as one
Imagine no possesions I wonder if you can No need for greed or hunger A brotherhood of man Imagine all the people Sharing all the world....
You may say U'm a dreamer But I'm not the only one I hope someday you'll join us And the world will live as one

新井氏の本に引用されていた歌詞と、YouTube 版では次のような違いがある。
Imagine no posessions I wonder if you can → Imagine no posessions I wonder if we can
A brotherhood → A brotherhood of sisterhood
これは、Youtube 版のほうが新しく、他者を導き支配する政治原理の否定、想像力による解放という抑圧とは無縁の芸術的救済を歌うというもとの歌詞の趣旨をいかしたものとなっているようだ。
YouTube のサイトには実にたくさんの英語のコメントが寄せられていたが、そこにはオノ・ヨーコさんにたいする侮蔑的な投稿が数多く混ざっていた。イマジンの歌詞に内包されている、宗教否定・国家否定・財産否定・差別否定のラジカルな非暴力のアナーキズムが、時として無礼で人種差別的、性差別的な罵詈雑言を喚起するものらしい。WEBサイトほど下品ではないが、米国の南部のファンダメンタリストや、ローマ教会の保守派なども、彼らの宗教的なドグマに基づいて、イマジンの思想を検閲し、信者に「悪影響」が及ぶことを問題視したということも思い出された。宗教や国家や財産に執着する権威有る御仁どもが「現実的」と思っている世界こそが、実は「夢のごときもの」であり、「イマジン」に盛り込まれた「夢想」こそが、「夢の中の夢」を通して「真実」を説いたものであったということに彼らは気づいてはいないのだろう。

  イマジンを歌ふ初夢ゆめうつつ   コスモ