十里洋場−上海の李香蘭

戦前の上海という都市は不可思議な魅力を湛えていた。その万華鏡の如き多面性は、多くの人々を惹き付けまた反撥させた。
「犬と中国人は入るべからず」と言う如き、伝統的な中華文明から見れば屈辱的なる「租界」であったにもかかわらず、多くの中国人にとっては西洋近代にむけて開かれた窓口であった。李香蘭の歌う「十里洋場」は、そういう上海の西欧租界の、それまで中国にはなかった「最風狂」な魅力を歌で巧みに表現したものである。

マレーシア版のCD(2006)が最も録音がよいが、上のスライドの伴奏はどうもマレーシア版と同じ録音を使っているようです。

  十里洋場              
歌手: 李香蘭
作詞:李雋清 作曲:姚敏

把蘇杭 比天堂          蘇州杭州といったらね 天国みたいなところ
蘇杭哪現在也平常      その蘇州杭州も今はね あったりまえのところかな
上海哪個更在天堂上     上海といったらね これは天国以上なのよ
洋場十里好呀好風光        洋場十里(上海租界)はね、なんて、なんて素敵な景色なんでしょう

坐汽車 住洋房          自動車に乗って 洋館に泊まるの
蓋著哪絨毯 睡銅床     絨毯を敷いた部屋で 銅のベッドで眠るのよ
呢絨哪個衣料時新様  毛皮のコートは最新モード 
火油(金賛)石閃呀閃光芒     ランプの光がダイアにきらめくとね、きらきら光るの

跳舞場 最風狂          ダンス場が一番いけてるわ
歌声婉婉轉 歩匆忙        歌声がまったりしててね せわしなくステップをふむの
燈光哪個暗暗 魂児蕩    灯の光の暗いところでね 魂がとろけちゃうわ
有情男女一呀一雙雙       恋する男女が二人一組、二人一組、
一雙雙               二人一組なのよ!