「蘇州の夜」−占領地域での医療奉仕活動

今朝のABC放送で、アフガニスタンに駐留している米軍が、治安の取り締まりをするだけでなく、医療活動を通じて現地の人に感謝されているという報道が為されていた。これを聴いて僕が思いだしたのが、李香蘭佐野周二と共演した「蘇州の夜」という映画である。この映画はまさに、日本軍が中国で現地の人のために医療活動をすることによって、人々に受け入れられていくというプロセスを描く国策映画であったからだ。佐野周二は、現地の中国人のために献身的に医療活動をする若い医師、李香蘭は孤児院で働く反日派の女性であるが、おぼれかかった孤児のために川に飛び込んで救助した佐野周二の真意に気づき、以後、彼に協力するようになり、次第に心惹かれていくという役割。二人は結局は結ばれないというところが、「支那の夜」とは違っているが、基本的には当時の国策映画のよくある枠組みの中でストーリーが展開していた。
 現在の米国もイラクアフガニスタンとの戦争状態が終結したとは言い難い。大東亜戦争時の日本と重なる部分が多い。アフガニスタンイラクに暴力的に侵入し、傀儡政権を立てたまではよかったが、その後の占領政策は難しい。日本ではアフガニスタンイラクを区別する人もいるがそれは間違っている。ちょうど、日本の「満州事変」と「支那事変」が連動しており、本質的に区別できないのと同じく、アフガニスタン侵略もイラク侵略も米軍にとっては根はひとつである。
 米軍の秩序維持活動が成功するかどうか、傀儡政権がいつまで長持ちするのか予測は難しい。日本には、軍事活動の方ではなく、平和維持活動に貢献することが米国からますます求められるであろうが、傀儡政権の基盤を強化するというかたちではなく、たとえ政権交代があったとしても現地の人に感謝されるような貢献の形を模索すべきだろう。