小出裕章氏から学ぶー最悪の事態を予見して最善を尽くすべきこと

小出裕章氏のインタビューを聴いた。現在起こっている事態が如何に深刻なものであるか、とくに再臨界が既に起きていると考えるべき重大な兆候が検出されているという指摘は重要であり、「再臨界」という事態が何を意味するか、何を証拠に再臨界が起きていると推測できるのか、その説明は明快であって、納得のいくものであった。ピットの汚染水の放射線量が急激に増加したことなど様々の現象が、再臨界が生じていると仮定すれば説明可能となるのである。再臨界が生じていると言っても、おそらく局所的なものであり、それによってただちに爆発が起きるわけではないが、核燃料のペレットが溶けて、炉心溶融が起こり、その結果、水蒸気爆発によって圧力容器が破壊される可能性が、再臨界によってたかまるのであり、その最悪の事態を何としても避けねばならぬということであった。各原子炉の内部に閉じ込められてあった放射性物質の総量から言って、水蒸気爆発によってまき散らされる放射性物質の数量はチェルノブイリの数倍にも及ぶということが現実的な可能性としてあることを、あらためて認識した。
こういう率直な指摘は、今のマスコミの報道で接することはまれである。小出氏の応答の中に私は、マスコミに登場する有名大学の教授達とは異なる、真実を直視する科学者の良心とも言うべきものを見た思いがした。我々が如何に困難な状況にあり、東電の現場で命がけで作業している人達がどれほどの難題を背負っているかがよく分かった。語られている内容は深刻であったが、政治的な派手なパフォーマンスなどとは無縁な一人の科学者の良心の発露に接し、私は全くの絶望ではなく、一縷の希望を与えられた。