放射能汚染水が海に漏出したことー海の安全と保安

昨日の記事で、武田邦彦氏のコメントを引用したが、今回の放射能汚染水の漏出事故とおなじ構造を持った設計ミスを放置した「安全・保安院」の責任をあらためて問いたい。武田氏の報告に由れば、ウラン濃縮工場の地下の配管ミスにより、放射能が海に漏れ出る危険に気付き、その改善を「安全・保安院」に申請したところ、すでに認可したシステムを変更することは出来ないと断られたという。このような形式主義が今回もまかり通ったのではないか。
原子炉の冷却水そのものが海に流出することはあってはならないのである。あってはならぬことが現実には放置されていたーこれが今回の原発事故の特徴である。すべての電源が故障するなどあってはならぬ事であったが、それが現実に起きた。それは論理的な可能性としてではなく「現実的な可能性」として既に吉井英勝氏によって何度も国会で警告されていたにもかかわらず、政府はそれに耳を貸さなかった。
今回、タービン建屋の地下で発見された高濃度の放射能汚染水は、そこだけではなく、外部の坑道の中まであふれ出ており、その坑道は海から僅か数十メートルの所まで伸びているという。福島第一原発の海水汚染の理由が次第に判明するにつれて、この放射能汚染の深刻さが明らかになってきたのである。
海水汚染は、三陸の豊かな漁業に深刻な影響を及ぼすだろう。福島で有機農法を長年に亘って実践してきた農家の主人が自殺したという報道を今朝のテレビで聴いた。農薬の過剰使用による健康被害を防ぐために長年努力されてきた方が、自分の大切にしてきた田畑が放射能に汚染されたことを知らされたときの悲嘆は、いかばかりのものであったろうか。農業だけでなく、放射能被害は漁業にも深刻な影響を与える。福島第一原発放射能汚染が、これ以上、海に影響を及ぼさないことを祈るのみである。